一般社団法人の設立時に理事会を設置して法人を設立したものの次のような理由で理事会の廃止を検討される法人様は少なくありません。
「理事3名のうち、1名が理事を続けられなくなってしまって後任が見つからない、、、」(理事会設置法人には必ず3名以上の理事が必要)
「監事をお願いしていた人が、監事を続けられなくなってしまって後任が見つからない、、、」(理事会設置法人には必ず1名以上の監事が必要)
「理事会を設置するため設立メンバーの一人を便宜監事にしていたが、実際には監事も理事と同じレベルで経営や運営に関与してしまっていて監事として全く機能していない。理事会設置法人には監事を置かないといけないが、そもそも理事会を設置しているメリットも感じられないので、いっそ廃止しようと思っている」
(理事会の設置を検討されている方・これから一般社団法人の設立はされる方はこちら➡一般社団法人の理事会設置の検討は慎重に)
理事会の存続要件
最初に理事会の存続要件について、簡単に説明します。
- 理事が3名以上
- 監事が1名以上
このいずれかの要件を満たさなくなってしまった場合、理事会設置法人として存続することができません。
理事会を置くことのメリット・デメリット
次に理事会があることのメリットとデメリットをいくつかご紹介します。
メリット
- 一部の重要事項について、社員総会を開かずに理事会決議で完結できる(社員総会の議決権を有する社員数の多い法人では機動性が上がりメリットと言える一方で、社員総会の議決権を有する社員が少数の法人では逆に機動性が下がってしまう場合も・・・)
- 対外的には「組織体制が整っている」との印象を与えやすい(監事に法務・税務の専門家が関与している場合は、その効果がより期待できる)
(一般社団法人の「社員」についてはこちら➡一般社団法人の「社員」とは?従業員との違い・人数・会員制度との関係)
デメリット
- 役員数(理事3名以上+監事1名以上)を常時維持する必要があり、メンバー確保の負担が大きくなる
- 単に理事と監事を合計で4名以上集めればいいというものではなく、理事と監事のそれぞれの役割を明確にする必要があるが、専門家が関与しない法人ではそこの整理の難しさがある
- 3が月以内に1回以上のペースで理事会を実際に開催する義務がある(定款規定による緩和は可能)
(定款規定についてはこちら➡一般社団法人設立時の定款作成)
理事会を廃止することのメリット
逆に理事会を廃止することで次のようなメリットがあります。
- あらゆる事項について社員総会で決められるようになる(社員が少数の社団では理事会がある場合よりも更に機動性が向上することが期待できます)
- 理事は1名以上でOK(※ただし、非営利型の一般社団法人の場合は、理事会を廃止しても理事は3名以上必要なので、注意しましょう。)
- 理事会の廃止とあわせて監事も廃止する場合は、監事の設置も不要に
(非営利型一般社団法人についてはこちら➡非営利型の一般社団法人とは?メリットと要件)
理事会の廃止に必要な手続き
理事会の廃止を決定した場合は次の順序で進めましょう。
1 理事会で社員総会の招集を決定する
理事会の廃止には定款変更決議が必要です。
定款変更決議は社員総会で行うので、まずは、理事会で社員総会の招集決定をします。
2 社員総会で、定款変更決議を行う
社員総会で理事会の廃止に伴う定款変更決議をします。
監事も廃止する場合は、監事に関する定めも併せて廃止します。
定款変更決議は、社員総会の特別決議が必要です。
社員総会の特別決議の要件は、株式会社の特別決議よりも更に要件が厳しく
総社員の半数以上、且つ、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(いずれも出席した社員ではなく、『総社員』が母数になりますので注意しましょう)
なお、監事設置法人の定めの廃止に関する定款変更決議をおこなうと監事の任期が満了し自動的に退任となりますが、この方法で退任させてしまうと、任期満了前の監事を本人の意思に関係なく退任させるという点で実質的に解任と変わらないところがあり、トラブルに発展してしまう可能性があります。
監事には予め十分な説明を行った上で、可能な限り、社員総会開催日付を期限とする辞任届を予め監事からもらっておくよう対応をしましょう。
登記の申請をする
社員総会が終わったら、必要な書類を整えて、登記の申請をします(定款変更の効力発生日から2週間以内に申請)。
登記申請の内容は、次のものが想定されます。
- 理事会設置法人の定めの廃止(必須)
- 監事設置法人の定めの廃止(監事も併せて廃止する場合は必要)
- 監事の変更(監事設置法人の定めも廃止する場合は必須)
- 理事の変更(監事退任者が理事として就任する場合は必要)
登記の際の添付書類は次のものが想定されます。
- 社員総会議事録(必須)
- 辞任届(監事が『辞任』で退任する場合に必要)
- 就任承諾書(監事退任者が理事として就任する場合に必要)
- 印鑑登録証明書(監事退任者が理事として就任する場合に必要)
手続きにかかる費用
理事会の廃止に伴ってかかる費用について解説します。
登録免許税(法務局に支払う税金)
- 理事会設置法人の廃止のみのケース:総額3万円
- 理事会の廃止に伴って監事設置法人の廃止も行う場合:総額7万円(内訳➡理事会設置法人の廃止:3万円、監事設置法人の廃止:3万円、監事の退任:1万円)※監事退任者が理事に就任する場合も同額。
司法書士報酬(当事務所の場合)
手続きを司法書士へご依頼いただく場合、登録免許税と別に司法書士報酬がかかります。
弊所へご依頼をいただいた場合の料金は下記のとおりです。
- 理事会設置法人の廃止のみのケース:総額3万円(税別)
- 理事会の廃止に伴って監事設置法人の廃止も行う場合:総額7万8400円(税別)~
お問い合わせをいただけましたら、個別に詳細な御見積書を作成いたしますので、お気軽にお問合せください。
(ご料金表はこちら➡会社・法人登記手続きの料金表)
理事会の廃止に迷ったら当事務所にご相談ください
理事会の廃止には沢山の費用がかかりますし、廃止した後にやっぱり設置したいとなった場合もやはりまた多額の費用がかかってしまいます。
以前に『一般社団法人の理事会設置の検討は慎重に』というコラムを書きましたが、実際のところ、『一般社団法人の理事会は、設置も廃止も慎重に』というのを声を大にして伝えたいです。
当事務所ではこれまでに理事会廃止をご検討されている法人様から多数ご相談をいただいておりますが、お話を伺った上で、「今の段階で廃止に踏み切るのは早計かもしれない」と感じた法人様に対しては正直にその旨をお伝えして、結果法人様の判断で手続を進めないということもよくあります。
「どうすればいいか迷っている・・・」という法人様もどうか気軽にご相談をいただければ幸いです。
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