最近は、社員総会をZoom、Meet、teamsなどのオンラインツールを使用して開催している一般社団法人も多いと思います。
社員総会の開催にあたっては法律上のルールがありますので、漫然とオンラインで社員総会を開催してしまうと、実は社員総会の開催要件を満たしていなかった、、、なんてことになりかねません。
実務をやっていると、お客様が作成した社員総会議事録に
開催場所:オンライン開催
という記載があるのをよくみかけますが、実はこれでは社員総会開催の要件を満たしていることが証明できません。
この記事では、
・オンライン社員総会の種類
・どのような要件の基でオンライン社員総会の開催が認められているのか
・オンラインで社員総会を開催する時に注意すべきこと
について解説していきます。
オンライン社員総会の種類
実は、オンライン社員総会については、一般社団法人の法律には現状何も規定されていません(令和7年3月7日時点)
そこで、経済産業省が令和2年2月26に株式会社向けに策定した『ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド』を参考にして、これを一般社団法人のケースに置き換えていきます。
この実施ガイドの中ではオンラインの株主総会として次の3パターンが想定されています。
- バーチャルオンリー型:リアル株主総会を開催することなく、取締役や株主等が、インターネット等の手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」をする株主総会
- ハイブリッド出席型:リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の場所に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」をすることができる株主総会
- ハイブリッド参加型:リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の開催場所に在所しない株主が、株主総会への法律上の「出席」を伴わずに、インターネット等の手段を用いて審議等を確認・傍聴することができる株主総会
上記のうち、1のバーチャルオンリー型については、現行法上、一定の要件を満たした上場会社だけが例外的に利用できるものであり、一般社団法人はこの方法を利用することができません。
社員総会の開催に当たっては『開催場所の定め』が必要なところ、バーチャルオンリーの場合、場所の定めそのものがないことが理由です(一定の要件を満たした上場会社のような例外規定もありません)
したがって、一般社団法人が利用できる開催方法としては、上記2と3の
ハイブリッド出席型の社員総会
ハイブリッド参加型の社員総会
のいずれかということになります。
どのような要件の基でオンライン社員総会の開催が認められているのか
では、どのような要件の基でそれぞれのオンライン社員総会の開催が認められるのかをみていきましょう。
前提として、いずれの場合も『開催場所』を定める必要があります。
この開催場所は、「オンライン会議」のようなかたちでは要件を満たしません。
実在する場所を社員総会の開催場所として定め、実際にそこで社員総会自体は行われている必要があります。
ハイブリッド出席型社員総会
この社員総会では、社員や役員は、開催場所で、または、オンラインツールをとおして、社員総会に実際に『出席』することになります。社員であれば、出席者として社員総会で意見を述べ、議決権を行使します。
そうであれば、オンラインで参加している出席者も開催場所で出席している人と同じレベルで参加できる状況を整える必要があると言えるでしょう。
具体的には、
・開催場所の参加者とオンラインでの参加者が双方不備なく意思疎通できる状態が必要
・オンラインでの参加者の意見を聞くことができ、且つ、議決権を行使(賛否の意思表明)できる状況が必要
社員数の多くない法人であれば、開催場所として便宜主たる事務所(社員数の少ない法人であれば代表理事の自宅も考えられる)を定めておき、当日は、代表理事以外のメンバーはオンラインで参加するという方法で運営している法人が多いように思います。
ハイブリッド参加型社員総会
この場合は、オンラインで参加している社員は、法律上『出席者ではない』ため、会場とオンライン参加者の双方が意思疎通をできる状態や意見を述べることができる状況を整える必要はありません。単に会場の状況を配信するようなかたちです。
注意点としては、オンライン参加者は出席者ではないので、社員総会の定足数不足等にならないよう気を付ける必要があります。
オンライン参加者が議決権を行使するには、事前に当日会場への参加が可能な代理人へ委任を行うか、書面又は電磁的方法による議決権行使を認める方法が考えられます。
書面又は電磁的方法による議決権行使を認める方法の場合は、社員総会の招集通知をする際に社員総会参考資料を交付しなければならない、招集通知を必ず開催日の2週間前までに発しなければならいなどのルールに、気を付けましょう。
オンラインで社員総会を開催する時に注意すべきこと
以下、より多くの法人で利用されることが想定されるハイブリッド出席型の社員総会を開催する際に注意が必要な点について説明します。
招集決定にあたり、注意すべき内容
- オンライン出席が可能な旨を決定し、具体的な出席方法も決定する必要がある
- 当日オンライン出席する社員が意見を述べ、議決権を行使する際の方法について予め決定しておく必要がある
議事録の記載について注意すること
- 開催場所に存在しない社員、役員等についてはWeb会議システムにより出席したことを明記する
- 役員のうち、Web会議システムにより出席した役員を明記する
- 開催場所とオンラインの双方で滞りなく意思疎通が図れていた事実を明記する(具体的には、「Web会議システムにより、出席者の音声と画像が即時に他の出席者に伝わり、適宜的確な意見表明が互いにできる状態になっていることを確認し、議事に入った。」のような一文が議事録に記載されている必要がある)
まとめ
便利なオンライン社員総会ですが、オンライン社員総会を開催するために押さえておかなければならないポイントがあることを説明しました。
- 一般社団法人が利用できるオンライン社員総会の方法は「ハイブリッド出席型」・「ハイブリッド参加型」の2つがある
- オンライン社員総会のうち、オンラインで参加した社員の出席が認められるのは、「ハイブリッド出席型」
- ハイブリッド出席型社員総会を開催する場合でも、必ず開催場所の定めは必要
- ハイブリッド出席型社員総会を開催する場合、開催場所とオンラインでの参加者が同じ場所で話しているのと同等にお互いに意見を交わせる状況を用意する必要がある
- ハイブリッド出席型社員総会で決議をした場合は、社員総会議事録に明記しなければならない内容がある
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