社員総会に出席できないとき、議決権の代理行使や書面投票はどうすればいい?

一般社団法人の設立をご検討中のお客様から、定款のご相談を受ける際によく聞かれる質問のひとつに、次のようなものがあります。

「社員総会に出席できない社員が、書面やメールで意思表示したり、他の社員に議決権を委任したりすることはできますか?
定款にその旨を記載すべきでしょうか?」

今回はこの疑問に、法律と実務の両面からお答えしていきます。

✅ 代理人による議決権行使について

まず、「他の社員に議決権を委任する」こと、つまり代理人による議決権の行使については、定款への記載の有無に関わらず法律上認められている制度です。
根拠となるのは、一般法人法第50条です。

(議決権の代理行使)
第50条 社員は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該社員又は代理人は、代理権を証明する書面を一般社団法人に提出しなければならない。

つまり、定款に定めがなくても議決権の代理行使は可能です。

ただし、代理人の資格を他の社員に限定したい場合には、定款に明記しておく必要があります。これは、総会屋や反社会的勢力の関与を防ぐための合理的な制限として認められています(代理人による議決権行使は、「自由にできることが原則」なので、その制限は合理的な範囲内でのみ認められます。)。

✅ 書面や電磁的方法による議決権の行使について

次に、書面や電子メールなどによる議決権の行使についてです。こちらは、代理行使と異なり、毎回の社員総会(の招集決定)ごとに「今回の総会では書面投票(又はメールなどの電磁的方法による投票)を認めるかどうか」を判断するルールになっています。定款に定める必要はありません。

原則は本人または代理人が社員総会に出席して議決権を行使する必要がありますが、社員総会の招集決定をする際に下記事項について定めることで書面若しくは電磁的方法若しくはその双方による議決権の行使ができるようになります。(一般法人法第38条)。

  • 社員総会に出席しない社員が書面で議決権を行使できる場合は、その旨

  • 電磁的方法(メールなど)での議決権行使を認める場合も同様に、その旨

また、書面や電磁的方法による議決権行使を認めた場合、以下の義務が法人側に課される点にも注意が必要です。

📌 書面投票を認めた場合の追加対応(抜粋)

  • 社員総会の2週間前までに招集通知を発する義務(法39条1項ただし書)➡本来1週間前までに招集通知を発すればよかったところ、書面やメールで議決権を行使する人たちに考える時間を与えるため前倒しで送らなければいけない!

  • 招集通知を書面で送る必要がある(法39条2項)➡理事会を設置しない一般社団法人では、本来招集通知が口頭でも許されるところ、書面で行わなければいけない。

  • 参考書類の作成・送付義務(法41条・42条)➡書面やメールで議決権行使をする社員は社員総会での話し合いに参加できないので、当日出席しない社員が議決権行使の検討を十分にできるよう、必要な情報を書面で交付する義務がある。

  • 社員総会開催日から3ヶ月間、議決権行使書面の備え置き義務(法51条3項)

✅ まとめ

  • 代理人による議決権行使は定款に書かなくてもOK。ただし、代理人を社員に限定したい場合は定款に記載を。

  • 書面・電磁的方法による議決権行使は、毎回の社員総会の招集決定時に判断が必要。

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