一般社団法人設立時の必要書類を司法書士が徹底解説
一般社団法人の設立をする上で最初に把握しておきたいことの一つに『必要書類』があります。
「そもそもなにを準備しないといけないのか全くわからない」という方もいれば、
「なんとなく準備しないといけない書類については調べたけど、それぞれどんな書類なのかイメージがつかない」という方もいると思います。
本コラムでは、このようなお悩みを抱えている方へ向けて、司法書士として数多くの一般社団法人設立に携わってきた筆者が、設立時にどんな書類を準備しなければいけないのか、それぞれの書類がどのような書類なのか、ということをわかりやすく解説していきます。
定款認証に必要な書類・登記申請に必要な書類の2種類がある
一般社団法人の設立手続き開始から設立登記申請までの流れを大きく2つにわけると、次の2つのゴールがあります。
- 公証役場での定款認証
- 法務局での設立登記申請
(より詳細な手続の流れはこちらのコラムを参照:一般社団法人設立の流れ)
本コラムでは、①定款認証に必要な書類、②設立登記申請に必要な書類に分けて解説をしていきます。
定款認証のために準備する書類
定款認証とは、設立する一般社団法人の発起人(設立時社員)が作成した定款が、正当な手続きにより作成されたことを証明する手続きのことをいいます。証明するのは、公証役場の公証人です。
この定款認証の際は、下記書類を準備する必要があります。
1.定款(必須)
まずは、定款認証をしてもらう定款を準備する必要があります。
定款認証は、電子署名した定款を認証してもらう方法、設立時社員全員の実印で押印した紙の定款を認証してもらう方法、のいずれかを選択することができます。
紙の定款を認証してもらうケースでは、設立時社員全員の実印で署名欄へ押印を行い、製本テープをした上で設立時社員全員の実印で表面と裏面の両面に契印をします。
また、この定款は、3部用意する必要があります(登記用・法人保管用・公証役場保管用の3部)
(定款の作成方法詳細については、こちらのコラムを参照:一般社団法人設立時の定款作成)
2.実質的支配者の申告書(必須)
この申告制度の趣旨は、定款認証する公証人が定款認証の前に法人の実質的支配者(一般社団法人の場合、多くのケースでは代表理事が実質的支配者になります)を把握することにより、法人の透明性を高め、暴力団員等による法人の不正使用(マネーロンダリング、テロ資金供与等)を抑止することです。
こちらのページの下部に書式がありますので参考にしてください➡定款認証 | 日本公証人連合会
3.設立時社員全員の印鑑証明書(必須)
設立時社員全員の印鑑証明書が必要です。
設立時社員が個人の場合は、市区町村役場の窓口で、又はマイナンバーカードを使用してコンビニに設置されているマルチコピー機で、取得が可能です(住所地の市区町村に印鑑登録を行っていない場合は、前提として印鑑登録が必要)
設立時社員が法人の場合は、法務局で取得します。
いずれも定款認証日時点で3か月以内に取得したものが必要です。
4.設立時社員である法人の履歴事項全部証明書(法人社員がいる場合のみ)
設立時社員に法人がいる場合、その法人の履歴事項全部証明書(いわゆる登記簿謄本)が必要です。法務局で取得します。
この履歴事項全部証明書も定款認証日時点で3か月以内に取得したものが必要です。
そのほか
定款認証の当日、公証役場へ行くことのできない設立時社員の代理人として、設立時社員のうちの1人や設立時社員以外の第三者が、公証役場へ定款認証に行く場合、その代理人に対する委任状を作成する必要があります。
(京橋公証役場作成の委任状サンプル:委 任 状)
設立登記申請に必要な書類
続けて、法務局で設立登記の申請をする際に必要な書類について解説していきます。
登記申請書(必須)
法務局に提出するメインの書類です。
当然と言えば当然のことですが、設立登記の申請書を作成しない限り、他の書類を完璧に揃えても設立登記の申請を受け付けてもらえません。
設立登記の申請書は、大きく分けると以下の2パートに分けることができます。
- 登記すべき事項
- 登記すべき事項以外
どこかの芸能人の名言(「俺か、俺以外か」)みたいな言い方になってしまいました。
登記すべき事項というパートに記載した内容は、そのまま登記簿謄本に転記されます。
したがって、そのボリュームも大きく、またとても重要な内容を記載します。ボリュームが多いので、通常は、別紙というかたちで提出します。別紙は、紙で提出することもできますが、CD-Rに記録して提出することもできます。
申請書の記載内容については、こちらの法務局のページが参考になります。
定款(必須)
先の公証役場での定款認証手続き後の定款を1通添付します。
役員の就任承諾書(必須)
役員(理事・監事)の就任承諾書を添付します。
就任承諾書については、実印を押印しなければならないものとそうでないものがあり、ここの区別が非常に重要です。
次のとおり、整理しましょう。
【理事会を設置する法人の場合】
- 代表理事の就任承諾書は、個人の実印での押印が必須
- 代表理事以外の役員の就任承諾書は、認印での押印でOK(登記上はそもそも押印さえ不要)
【理事会を設置しない法人】
- 理事の就任承諾書は、個人の実印での押印が必須(代表理事だけでなく、代表権のない一般の理事も必須)
- 監事の就任承諾書は、認印でOK(登記上はそもそも押印さえ不要)
なお、代表理事の就任承諾書には、理事及び代表理事として就任承諾する旨の記載をしましょう。
役員の印鑑登録証明書(必須)
一定の役員の印鑑登録証明書の提出が必要です。
考え方としては、登記添付書類として実印で押印の必要な書類を提出した役員については印鑑登録証明書の提出が必要と考えましょう。
先ほどの就任承諾書に実印で押印が必要だった役員については、これと併せて印鑑登録証明書の提出が必要です。
この印鑑登録証明書には、有効期限はありません。したがって、たとえ1年以上前に取得したものでも、最新の住所と相違がない場合は、そのままご利用をいただけます(ただし、印鑑届をする代表理事については、登記申請日時点で3か月以内の印鑑登録証明書を準備する必要があります)
役員の本人確認証明書(場合によって必要)
役員のうち、印鑑登録証明書の提出が不要な人については、本人確認証明書の提出をします。
次のような書類が本人確認証明書となります。
- 住民票(個人番号が記載されていないもの)
- 戸籍の附票
- 運転免許証等のコピー(裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して、記名する必要があります。)
- マイナンバーカードの写真面のコピー(写真面のみをコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して、記名する必要があります。)
詳しくは、こちらのページをご参照ください。
設立時社員の決議書(場合によって必要)
設立時社員の決議によって、下記を決定した場合、この書類を作成・添付します。
- 主たる事務所の所在場所
- 設立時の理事・監事
- (設立時の代表理事)
上記は、いずれも定款で定めることもできます。
すべてを定款で定めた場合は、別途決議を行う必要がないので、この決議書の提出は不要です。私が設立手続きを対応する場合、お客様の手間を減らす意味もあり、これらもすべて定款の附則部分で決定していただくケースがほとんどです。
3の設立時の代表理事をかっこ書きにしているのは、次の理由からです。
定款で設立時の代表理事を定めていないケースでは、代表理事は次のように定めます。
【理事会を設置する法人の場合】
設立時の理事の過半数の決定により、設立時の代表理事を選定する。
【理事会を設置しない法人の場合】
設立時社員の決議によって、設立時の代表理事を選定することができる(選定しなかった場合は、設立時の理事の全員が設立時の代表理事になる)。
上記のとおり、理事会を設置する法人では、設立時社員が設立時の代表理事を決定する権限をもっていないので、かっこ書きにしています。
設立時代表理事の選定に関する書面(場合によって必要)
先述のとおり、理事会を設置する法人が、定款内で設立時の代表理事を選定していない場合に、設立時の理事の過半数の決定により設立時の代表理事を選定したことの証明として本書類が必要になります。
この書類の注意点は、この書面に記名している理事全員がそれぞれの個人の実印で押印をする必要があるということです。したがって、理事会を設置する法人の理事であっても定款で設立時の代表理事を定めていない場合は、理事は原則全員印鑑登録証明書の提出が必要になります。
印鑑届書(書面申請の場合は必須)
印鑑届書は、「ここに押してある印鑑がこの法人の代表印です」ということを代表理事が法務局に申し出るための書類です。
この届出をすることによって、届け出た印鑑が法人の代表印として法務局に登録されます。
この印鑑届書は、厳密には設立登記の添付書類ではありません。
しかし、書面で登記申請をする場合、設立登記申請に併せて、法人の代表印(いわゆる法人実印)の届出が必須となります。
したがって、書面で登記の申請をするのであれば、この届出も必ず必要になります。
書式はこちらです。
司法書士にご依頼をいただくと・・・
ここまで作成・準備の必要な書類について、かなり細かく解説をさせていただきました。
作成する書類が多すぎて、「ハードル高そうだなあ・・・」と感じられた方も少なくないと思います。
そんな時こそ、是非司法書士を利用してください!!
弊所へ設立のお手続きをご依頼いただいた場合、上記書類のうち、お客様にご用意いただく書類は印鑑登録証明書のみです!
その他の書類については、内容をしっかりとヒアリングした上で、すべて司法書士が作成を代理いたしますので、お客様にはより大切な設立後の法人運営を考えることに集中していただけます。
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