一般社団法人を設立しようと決めた方で、
「一般社団法人って一人で設立できるの?一人で設立できないなら何人集めればいいの?」
という疑問をお持ちの方は多いと思います。
実は、設立に必要な人数は、次の2つの要素によって決まります。
- 機関設計(関連記事:一般社団法人の理事会設置の検討は慎重に)
- 非営利型の一般社団法人にするか通常型の一般社団法人にするか(関連記事:非営利型の一般社団法人とは?メリットと要件)
この記事では、一般社団法人を設立するときにどのような役割の人が何人必要なのかについてケース別に解説していきます。
① ミニマムに一般社団法人を設立する場合の必要人数
最初に最少人数で設立するケースについて、解説します。
なお、このケースでは、理事会を設置することができません(理事会を設置したい場合は②へ)
また、非営利型の一般社団法人として設立することもできません。(非営利型の一般社団法人として設立したい場合は③へ)
ミニマムで設立する場合に必要な人数はずばり2人です。
この2人は、1人は必ず個人である必要がありますが、もう一人は会社や社団法人などの法人でも差し支えありません。
どのような役割の人が何人必要なのかみていきましょう。
設立時社員(2名以上)
設立時社員とは、一般社団法人の設立後に『社員』になる人です。
社員は従業員のことではありません。一般社団法人の最高意思決定機関である社員総会の構成員のことです。株式会社の株主に類似の立場の人です。(関連記事:一般社団法人の「社員」とは?)
設立後は社員は一人でもいいのですが、法人を設立する時は必ず2名以上の設立時社員が必要です。
個人だけでなく、法人も社員になることができます(法人社員だけが設立時社員になることも可能)。
法人が設立時社員になるときは、設立時社員になる法人の定款に記載されている事業目的と設立する法人の定款に記載する事業目的の一部に関連があることを求められます。(関連記事:一般社団法人設立時の定款作成)
もし、100%株式株式を保有している会社をご自身が持っているというような場合には、実質的に1人社員で一般社団法人を設立することも可能です。(関連記事:実質一人社員で一般社団法人を設立する方法)
設立時理事(1名以上)
設立時理事とは、一般社団法人の設立後に理事になる人のことです。
理事は、一般社団法人の業務執行を担う役員です。もう少しくだけた言い方に代えると、一般社団法人の手となり足となり、実際に一般社団法人の意思決定をし動かす人です。株式会社の取締役に相当します。
社員は会社その他の法人がなることもできますが、理事は、法人がその地位に就くことはできず、必ず個人が役割を担う必要があります。
なお、理事と社員を兼任することは可能です。
ミニマム設計の構成
ミニマム設計の構成について整理すると、次のとおりです。
必要人数:2名
- 設立時社員2名
- 設立時理事1名(社員のうち、1名が理事を兼任)
(関連記事:一般社団法人の設立に必要な最低人数)
② 理事会を設置して一般社団法人を設立する場合の必要人数
次に理事会を設置するケースについて解説します。
理事会を設置することで、社員総会の権限の一部が理事会へ移行し社員数の多い法人では機動力が上がるということが期待できます。
また対外的に、法人としての組織体制が整っているという印象を与える効果が期待でき、これにより金融機関の融資や、取引先との取引で有利に働く可能性があります。
理事会を設置して一般社団法人を設立するのに必要な人数は4人です。
設立時社員が2名以上必要というのは、ミニマム設立のケースと同じなので、説明を割愛します。
どのような役割の人が何人必要なのかみていきましょう。
設立時理事(3名以上)
理事会を設置する場合、理事は3名以上必要です。
理事会は合議制のかたちをとるため、単独理事では成立しません。
理事会を置かない一般社団法人では、各理事は原則業務執行をします。
これに対して、理事会を置く一般社団法人の理事は、代表理事と理事会で業務執行理事として定められた理事を除いて原則業務を執行をしません。
その他の理事については、理事会で議決権を行使するというかたちで業務執行の意思決定に参加することになります。
設立時監事(1名以上)
設立時監事とは、一般社団法人の設立後に監事になる人のことです。
理事会を設置する法人には、必ず監事を1名以上置かなければいけません。
監事は、一般社団法人の監督機関としての役員です。株式会社の監査役に相当します。監事は、理事の業務が適正かどうかを監査し、計算書類などのチェックも行います。
理事と同様、社員が監事を兼任することも可能ですが、法人がその地位に就くことはできず必ず個人が役割を担う必要があります。
理事と監事の兼任はできません。(一般社団法人とその子法人の理事や使用人は監事になることができません)
理事会を設置する法人の設計
理事会を設置する法人の構成について整理すると次のとおりです。
必要人数:4名以上
- 設立時社員2名以上
- 設立時理事3名以上
- 設立時監事1名以上
理事会を設置すると、設置しないケースに比べて人数要件がかなり厳しくなります。
最初だけ整えればいいというものではなく、設立後もその状態を維持し続けていかなければいけないため、本当に理事会が必要なのか、理事や監事などの役員に就任するメンバーは設立後も長く役員を続けてもらえそうかということは、設立時点でよく検討した上で設置を決定することをお勧めします。
(関連記事:一般社団法人の理事会設置の検討は慎重に)
(関連記事:一般社団法人の理事会廃止の手続き及び費用)
③ 非営利型の一般社団法人として設立する場合の必要人数
最後に非営利型の一般社団法人として設立するケースについて解説します。
非営利型の一般社団法人として設立することで、収益事業に該当しない所得については課税されないというメリットを享受することができます。(関連記事:非営利型の一般社団法人とは?メリットと要件)
非営利型の一般社団法人として設立するのに必要な人数は3人です。
設立時社員が2名以上必要というのは、ミニマム設立のケースと同じなので、説明を割愛します。
どのような役割の人が何人必要なのかみていきましょう。
設立時理事(3名以上)※特別な要件があり
非営利型の一般社団法人として設立する場合でも理事会の設置は任意ですが、3名以上の設立時理事を置く必要があります。
更に非営利型の一般社団法人として設立する場合、単に設立時理事を3名以上用意すればよいというわけでなく、次の要件が加わります。
各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること
少しわかりにくいので、補足します。
親族等とは?
次のひとたちが親族等に該当します。
- 当該理事の配偶者
- 当該理事の3親等内の親族
- 当該理事と事実上、婚姻関係にある者(内縁の妻・夫)
- 当該理事に使用されている者
- 上記の1~4以外の者で当該理事から受ける金銭その他の資産により生計を維持している者
- 上記3~5に掲げる者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は三親等以内の親族
3分の1以下について
理事が5名以下の法人であれば、各理事は自分以外の理事と親族等の関係がないことが必要になります。
もし、自分と配偶者の双方が設立時の理事になるのであれば、少なくとも6名以上の設立時理事を用意する必要があります。
(関連記事:非営利型の一般社団法人とは?メリットと要件)
非営利型の一般社団法人として設立する場合の設計
非営利型一般社団法人として設立する場合の構成について整理すると次のとおりです。
必要人数:3名以上
- 設立時社員2名以上
- 設立時理事3名以上(※親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であることの要件あり)
非営利型の一般社団法人として設立する場合は、通常型の一般社団法人と比べて、人数要件だけでなう、属性要件も加わるため、設立時理事への就任者を探すのに苦労するケースが多いです。
こちらも、設立時だけ要件を満たしていればいいというものではなく、設立後も継続して要件を満たし続ける必要があるため注意が必要です(設立後に非営利型一般社団法人の要件を満たさなくなった場合、自動的に通常型の一般社団法人になってしまいます ⇒ 通常型の一般社団法人になると遡ってすべての所得に課税がされてしまいます)
まとめ
今回の記事では、一般社団法人の設立時に必要な人数について、ケース別に解説しました。
- ミニマム ⇒ 2名以上
- 理事会設置 ⇒ 4名以上
- 非営利型 ⇒ 3名以上(※付加要件あり)
設立手続きのご相談をいただく際、必要な人数が集まっていないためにやむなく設立時に非営利型での設立を断念される方や、当初希望していた設立時期を後ろ倒しにされる方もいます。(なお、設立後に一定の手続きを経て通常型の法人から非営利型の法人へ移行することは可能です)
また、法人設立後に設立時の理事や監事として就任した方に事情があって役員を続けられなくなってしまい、その結果、理事会等の廃止に迫られてしまうということもあります。
社員や役員の人数は、設立時の最重要検討事項の一つです。
円滑に設立手続きを進められるよう、予めしっかりと固めておくことをお勧めします。
一般社団法人の設立をご検討中の方へ
一般社団法人を設立する上で、最初の人選は非常に重要です。
「社員にはどのような人を選ぶべき?」「知人に名前だけ借りても大丈夫?」など、ご不安事がありましたら、是非弊所へご相談ください。
当事務所では、一般社団法人設立の初回相談を無料で承っております。
「こんなこと聞いてもいいのかな?」というようなご質問でも、遠慮なくご相談ください。
📌 あわせて読みたい関連記事
【設立関連コラム】
- 一般社団法人の設立を考えたら最初に読むページ
- 一般社団法人の設立|人数・費用・必要書類・流れ・期間・定款
- 一般社団法人設立時の必要書類を司法書士が徹底解説
- 一般社団法人設立の流れ
- 一般社団法人の設立にかかる費用
- 非営利型の一般社団法人とは?メリットと要件
- 一般社団法人の設立、誰に相談するのが正解?
- 一般社団法人の役員氏名に旧姓を併記するには?
- 一般社団法人の主たる事務所の表記方法
- 実質一人社員で一般社団法人を設立する方法
- 一般社団法人の理事会設置の検討は慎重に
- 一般社団法人の「社員」とは?
- 任意団体から一般社団法人へ|信用力アップ・寄付金獲得のための法人化ガイド
- 一般社団法人の設立に必要な最低人数
【運営関連コラム】
📘 著書(共著)
「一般社団法人設立・登記・運営がまとめてわかる本(日本法令)」