一般社団法人のみなし社員総会(書面決議)について司法書士が解説

「社員の合意は確認できているので、早急に社員総会を開いて決議を行いたいけれど、他の社員メンバーと予定が合わず、中々社員総会が開催できない・・・」

そんなときに利用できるのが『みなし社員総会(書面決議)』です。

一般社団法人のみなし社員総会(書面決議)とは

最初に根拠となる法律の条文とともに制度の概要について紹介します。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第58条第1項
理事又は社員が社員総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき社員の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の社員総会の決議があったものとみなす

提案者

提案をできる人は、理事又は社員です。

理事だけでなく、社員が提案することもできます。

成立要件

社員全員の同意(書面又は電磁的記録)が必要です。

社員数が多い法人では、使用するハードルが高くなってしまいます。

また、社員間で賛否の意見が分かれるような議案については、利用ができませんので注意しましょう。

更に、口頭による同意では成立しません。必ず書面又は電磁的記録(メールなど)による同意を取り付けるようにしましょう。

その効果

成立要件を満たすと社員総会の決議があったものとみなされます

全社員からの同意の書面・電磁的記録によって、社員総会を実開催することなく、社員総会の決議が成立したことになります。

各社員からバラバラに同意の意思表示をした書面・電磁的記録が届くことが想定されますが、全社員からの同意の意思表示が法人に到着した日付が社員総会決議の成立日となります。

実際にみなし社員総会(書面決議)を行う場合の流れ

理事又は社員から提案書・同意書を全社員へ送付

社員総会で決議を行いたいことがある理事又は社員が提案書と同意書を作成し、全社員へ宛てて送付します。

いつまでも返信がこないと困るので提案書には、返送期限を設けておくようにしましょう。

なお、先述のとおり、社員総会の決議成立日は全社員からの同意の意思表示が法人に到着した日付となるため、決議の成立日を調整するのは難しいです。

したがって、決議内容の効力発生日を調整したい場合は、提案内容ごとに効力発生日を明記しておくようにしましょう。

全社員から同意書が返送される

最後の同意書が法人に到着した日付に社員総会決議が成立したことになります。

社員総会議事録を作成する

みなし社員総会により決議を行った場合も社員総会議事録の作成を行う必要があります。

この議事録には、次の事項について記載が必要です(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第11条第4項第1号)

  • 社員総会の決議があったとみなされた事項の内容
  • 提案をした理事又は社員の氏名(名称)
  • 社員総会の決議があったものとみなされた日
  • 議事録の作成に係る職務を行った者の氏名

社員総会の決議後に登記申請が必要な場合は、この社員総会議事録が添付書類となります

全社員から集めた同意書は法人での保管義務があるものの添付書類にはなりません

定時社員総会でもみなし社員総会の制度を利用できる

みなし社員総会の制度は臨時社員総会だけでなく、定時社員総会でも利用可能です。

計算書類の承認決議を行う定時社員総会では事業報告を行いますが、この事業報告については、次の条文の制度を利用することで社員総会での報告を省略することができます。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第59条
理事が社員の全員に対して社員総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を社員総会に報告することを要しないことにつき社員の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の社員総会への報告があったものとみなす

上記制度を利用して報告の省略をする場合は、提案書に「報告を省略する事項」についても記載し、作成する社員総会議事録には先ほどの内容に加えて次の事項を記載します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第11条第4項第2号)

  • 社員総会への報告があったものとみなされた事項の内容
  • 社員総会への報告があったものとみなされた日
  • (議事録の作成に係る職務を行った者の氏名)※重複しているためカッコ書き

まとめ

今回のコラムでは一般社団法人のみなし社員総会について解説しました。

理事又は社員が、社員総会の目的である事項について提案をし、社員全員から書面又は電磁的方法で同意の意思表示があったときは、社員総会の決議があったものとみなされる」というものでした。

「全社員の合意は確認できていて直ぐに決議したいことがあるけれど、社員総会を開催するのが難しい」という場合には特に有効な方法です。

私がご相談をいただくケースでは、急ぎ対応の必要なみなし解散された法人の復活(関連コラム:みなし解散された一般社団法人を復活させる方法とその費用)で使うケースや、定時総会を実開催していない法人の理事の改選(関連コラム:一般社団法人の理事改選|ケース別の手続き・必要書類・登記まで徹底解説)の手続きで利用することが多いです。

もしも全社員の同意が難しい場合は、オンライン社員総会(関連コラム:一般社団法人のオンライン社員総会の開催方法)の開催なども検討しましょう。

みなし社員総会の手続き支援もご相談ください

弊所ではみなし社員総会を開催したいという法人様の提案書・同意書の作成や社員総会議事録の作成支援も行なっております。

司法書士による法務顧問サービスでは、これらの法務書類の作成も支援内容に含まれています。

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