「一般社団法人って、なんなの?」
そう聞かれる機会が、最近とても増えてきました。
うまく説明したいと思いつつ、制度の枠組みや法律用語が多くて、なかなか一言で説明するのが難しい…。
そこで今回は、自分自身の理解の整理も兼ねて、「一般社団法人とは何か」について、あらためてまとめてみようと思います。
この記事では、
一般社団法人についてまったく知らない方でも理解できるように
すでに関わっているけれど、人に説明するのが難しいと感じている方にも役立つように
丁寧に、そして実務経験を交えて解説していきます。
お読みいただいた後に「そうそう、こういうことだったんだ」と思っていただける記事になれば幸いです。
一般社団法人とは?ざっくり言うとこういうものです
一般社団法人とは、「人の集まりに法人格を与えたもの」です。
もう少しくだけた言い方をすれば、
「共通の目的を持った人たちが、団体としてきちんと“法人格”を持つことで、社会的な信用や法的な基盤を得ることができる仕組み」
といった感じです。
イメージをもっていただくため具体的にどのような法人があるのかご紹介します。(あくまでほんの一例です)
- 劇団、オーケストラ、スポーツチームや、任意団体として活動していたボランティア団体等が信用力の強化、会計の透明性を上げるために法人化する場合
- 福祉関連の事業を開始したいと一念発起をした人が福祉関連事業を開始するにあたりその箱として一般社団法人を選択する場合
- 既に株式会社等で事業を行っている経営者が、事業の一部(特に利益追求をしない事業について)を会社から切り離して一般社団で運営する場合
- 協会ビジネス(新たに創設する民間資格の認定やその資格取得のための講座の実施を行うビジネス)を開始する場合
(関連記事:一般社団法人を設立しているのはどんな人?|目的別に具体例で解説)
一般社団法人の構成員は『社員』!
前章の冒頭で、「一般社団法人は、人の集まりに法人格を与えたもの」と言いました。では、その“人”とは具体的に誰のことを指すのでしょうか?
ここでいう『人』とは、『社員』と呼ばれる人のことです。
社員というと一般的に「従業員」のことをイメージしてしまいますが、この『社員』とは「従業員」のことではありません。
法人(会社、社団法人、NPO法人等)における『社員』とは、その法人の構成員のことをいいます。
株式会社で考えてみると、株式会社の構成員(=社員)とは、株主のことです。株主というのは、株式会社における社員のあだ名みたいなものです。
株主が株式会社の構成員だからこそ、株式会社の最重要事項は、必ず株主総会で決定するのです。
一般社団法人の構成員はそのまま社員といいます。
一般社団法人にも株式会社の株主総会に相当する『社員総会』という機関があります。
社員総会は一般社団法人の最重要事項について決議をしますが、その構成員である社員は、社員総会の中で原則1人1議決権を持ちます。
(関連記事:一般社団法人の「社員」とは?)
一般社団法人は『非営利法人』
『非営利法人』耳慣れない単語ですよね。
株式会社が『営利法人』に分類されるのに対して、一般社団法人は『非営利法人』に分類されます。
この違いはなんでしょうか。
株式会社は、法人が利益を上げてその利益を社員(=株主)に分配することを目的としています。
一方、一般社団法人は、法人が利益を上げてもその利益を社員に分配することを目的としていません。もっと言えば、一般社団法人においては法律が「社員に利益を分配することを禁止」しています。
このように、法人の利益を社員に分配することを目的としている法人を『営利法人』、法人の利益を社員に分配することを目的としない(禁止している)法人を『非営利法人』と呼びます。
利益を分配できないなら何故一般社団法人を選ぶの?
「せっかく法人に利益が出たのにそれが構成員に還元されないのなら、会社じゃなくて一般社団法人を選ぶ意味がわからない!!」と思った方も多いかと思います。
一般社団法人は「誰かが儲けるため」ではなく、「目的のために活動する団体」が多く、構成員が配当を受け取れないことはあまり問題にならないケースも多いのです。
役員報酬や従業員への給与の支払いはOK
一般社団法人の利益を社員(構成員)に分配することができないという言葉を聞くと非常に勘違いが起こりがちなのですが、一般社団法人の理事や監事などの役員に相当額の役員報酬を支払ったり、一般社団法人の従業員に相当額の給与を支払ったりすることはなんら問題ありません。この点においては、株式会社と同じです。
項目 | 株式会社 | 一般社団法人 |
---|---|---|
社員への利益配当 | できる(株主に配当) | できない |
役員への報酬 | 支払える | 支払える |
従業員への給与 | 支払える | 支払える |
出資の必要性 | 必要(株式を持つ) | 不要(社員=出資者ではない) |
(関連記事:一般社団法人の設立に必要な人数をケース別に解説)
対外的なイメージ
非営利法人であるということ自体が重要なケースもあります。
福祉関連事業であれば、営利法人よりも非営利法人が運営している方が対外的なイメージがプラスになることも少なくありません。
特殊な技術を要する建設業を本業とする会社が、行政や取引先企業からの需要で技術伝達事業を行う場合に非営利法人で運営をするのが望ましいという理由で一般社団法人を設立するケースもこれまでに多く相談をいただきました。
一定の要件を満たすことで法人税減免のメリットを受けられるケースも
一般社団法人も基本的には株式会社と同様にすべての収入が法人税の課税対象となります。
しかし一定の要件を満たすことで特定の事業による収入を除いて法人税を課されない『非営利型一般社団法人』になることができます。
項目 | 株式会社 | 一般社団法人(通常型) | 一般社団法人(非営利型) |
---|---|---|---|
法人格の種類 | 営利法人 | 非営利法人 | 非営利法人 |
収益事業の実施 | 可能 | 可能 | 可能 |
法人税の課税範囲 | すべての所得に課税 | すべての所得に課税 | 収益事業のみ課税(その他は非課税) |
📌 ポイントまとめ文:
一般社団法人は非営利法人ですが、「税務上の非営利性」は定款や運営形態により区別されます。通常型ではすべての収入が法人税の課税対象となるのに対し、非営利型であれば「収益事業」に該当しない範囲の収入には法人税がかからず、有利になるケースがあります。
(非営利型一般社団法人について詳しくは:非営利型の一般社団法人とは?メリットと要件)
まとめ
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
この記事をとおして、どのような団体が一般社団法人として活動しているのか、会社とどう違うのか、何故一般社団法人が選ばれるのか、少しでもイメージを持てていただけたら幸いです。
日本には様々な形態の法人がありますが、一般社団法人は、株式会社、合同会社に次いで3番目に多く設立されている法人です。実に毎年6000社(2024年データ)ほどの新たな一般社団法人が設立されています。
現在任意団体で活動をされている方、これから法人を設立して活動を開始される方、本業の一部事業や新規事業を独立した法人で運営することを検討している方、一般社団法人という選択肢も是非検討してみてください。
弊所ホームページには、一般社団法人に関して様々なテーマでコラムを随時掲載しています。
ご興味のある方は是非、他のコラムも読んでみてください!
(設立をご検討中の方へのお勧めコラム➡一般社団法人の設立を考えたら最初に読むページ)
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