暗号資産(仮想通貨)による投資を事業の目的とした合同会社の設立について

会社設立

最近、仮想通貨(正確には、『暗号資産』といいます。)による投資を事業の目的とした合同会社の設立についてお問い合わせをいただくことが増えてきました。

今までは個人で仮想通貨の投資をしていた方が、節税対策の為に合同会社を設立するというものです。(どのような節税効果があるのかは、税理士さんへご確認ください!)

こういう会社を設立する際にお客様からよく聞かれるのが、

合同会社は事業目的に仮想通貨ってことばを入れられないって聞いたけど」とか、

そもそも合同会社で仮想通貨の投資ができないかもしれないって聞いたんだけど・・・

というものです。

初めてお客様からこれを聞いたときは、私自身も「え?そうなの??」と思いました。

気になったので色んな役所に問い合わせて調べてみました。

結論からお伝えすると、合同会社であっても事業目的に暗号資産(仮想通貨)ということばを入れること自体は可能(登記もできる)です。

また、合同会社であっても自社の為だけに仮想通貨を利用して投資をすること自体は問題ないと思われます。

でも、何故お客様からそういった疑問が出てきたのかとか(理由があるはず!)、注意しないといけない点があるので、今回はその辺りをご紹介します。

そもそも何故、「仮想通貨という言葉を合同会社の事業目的に入れられないかもしれない」とか「合同会社で仮想通貨の投資ができないかもしれない」という話が出てきたのか。

私がお客様の質問に回答するにあたって、先ずここからのスタートでした。

これは、調べたらすぐに分かりました。

資金決済法という法律の中に『暗号資産交換業』という言葉が出てきます。

この暗号資産交換業を行うことのできる会社を暗号資産(仮想通貨)交換業者といいます。

そして、この暗号資産交換業者になる為には国に登録が必要なのですが、その登録ができる会社は株式会社だけなのです。

合同会社はそもそもこの暗号資産交換業者になることはできないので、合同会社の事業目的として『暗号資産(仮想通貨)交換業』と入れようとすると法務局からストップがかかる可能性が極めて高いのです。

では、暗号資産交換業ってどういう業者なんでしょうか?

もし、単に仮想通貨の取引所を利用して仮想通貨の売り買いをする会社が暗号資産交換業に該当するなら、国に登録が必要(登録するのはめちゃくちゃハードルが高いです・・・)ですし、そもそも合同会社では仮想通貨の売り買いができないという話になってしまいます。

暗号資産(仮想通貨)交換業者とは??

どんな会社が暗号資産(仮想通貨)交換業者なんでしょうか?

法律では、次のどれかに該当する会社は、暗号資産交換業者だと言っています。

  1. 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
  2. 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
  3. その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
  4. 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。

自分の会社の為だけに投資をする会社は、2~4に該当することは考えられませんので、2~4はスルーします。

では、1はどうでしょう?

仮想通貨の取引所を利用して自分の会社の為に投資を行う場合でも『暗号資産の売買』は、必要ですよね。

実は、この法律に書かれている暗号資産の売買は、単に売買するだけでなく、『対公衆性』と『反復継続性』をもって売買を行うこととされています。

なんだか抽象的な言葉がでてきました^^;

反復継続性の方は、仮想通貨による投資を会社のメインの目的とする以上、該当しそうな感じがします。

では、対公衆性の方はどうでしょうか…?

自分の会社の為だけに仮想通貨の投資を行う会社は、『対公衆性』の要件に該当するのか?

まず、ここでいう対公衆性の意味を調べてみました。

「対公衆性とはどういう意味か?」という質問に対して、暗号資産(仮想通貨)交換業の登録を管轄している金融庁は次のようにコメントしています。

‟仮想通貨交換業については、様々な取引形態が想定されることから、具体的な行為が「対公衆性」を有するものであるか否かは、個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきものと考えられます。‟

※平成29年3月24日金融庁コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(PDF: 1,016KB)より抜粋

難しく書いてはありますが、要するに「はっきり答えることはできない」ということです苦笑

しかし、このコメントには続きがあります。

‟なお、例えば、単なる投資目的として自ら行う取引については、通常は「対公衆性」の要件を満たさないものと考えられます。‟

これは「会社が純粋に自社の為に仮想通貨を利用した投資を行うだけであれば、普通は対公衆性の要件は満たさない=暗号資産交換業者には該当しない」といえるかと思います。

実際、金融庁の担当部署へ確認したところ、「登録の必要性の有無については、こちらのコメントを基準として判断していただいています」という回答でした。

自社の為だけに仮想通貨で投資をする行為は暗号資産交換業者の定義には当てはまりませんし、暗号資産交換業者の登録制度というシステムは、登録をしていない会社が自社の為だけに投資を行う行為を禁止する制度でもないので、合同会社が自社の為だけに仮想通貨を利用して投資をすること自体は問題ないものと思われます。

その他の注意点

その他、こまごまとした注意点をいくつか。

先ず登記に関してですが、合同会社が『暗号資産(仮想通貨)』ということばを事業目的に使用することだけを理由として登記にストップがかかるようなことは今のところありません。

しかし、合同会社が『暗号資産(仮想通貨)交換業』という言葉を事業目的に入れて登記申請を行った場合は、登記にストップがかかる可能性が高いですし、そもそも合同会社の事業としてやってはいけないことなので入れるべきではありません。

また、暗号資産(仮想通貨)交換業と誤認されるような内容の事業目的にすることはリスクがあるので、定款の目的の記載方法は十分に検討する必要があるかと思います。

この辺り不安があるようでしたら、登記の専門家である司法書士へご相談いただくことをお勧めします。

尚、仮想通貨取引所の運営会社の方からお話を伺ったところによると、事業目的に暗号資産や仮想通貨ということばが入っているかどうかは、仮想通貨の法人口座が開設できるかどうかと直接的には関係がないようです。

また「投資」や「暗号資産(仮想通貨)」という文言が事業目的に入っていることで、銀行、信用金庫等の法人口座が開設できないというケースもあるようですので注意が必要です。

この辺りの要件については法人口座を開設する予定の金融機関等に確認しておくことをお勧めします。

まとめ

今回は、仮想通貨による投資を目的とした合同会社の設立についてご紹介しました。

ご自身で会社設立の登記をされる場合、株式会社であれば公証役場で定款の認証手続があるので、法律の専門家である公証人のアドバイスを受ける機会があります。

しかし、合同会社の設立の場合は、公証人の定款認証の手続が不要である為、事業目的の文言をはじめ、定款の細かい部分について、専門家のアドバイスを受ける機会がありません。

「自分の作成した定款に不備はないだろうか。登記が通ったとしても、後々問題になるようなことはないだろうか。」

こんな不安がありましたら、会社設立登記の専門家である司法書士へご相談ください。

当事務所では仮想通貨による投資を目的とした合同会社の設立登記のご依頼を多数いただき、お客様の心配事を事前にしっかりと伺い、クリアにした上で会社設立の手続を進めることでお客様から喜びの声をいただいております。

皆様からのご相談を心よりお待ちしております。

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