一般社団法人の「社員」とは?従業員との違い・人数・会員制度との関係をわかりやすく解説

一般社団法人の設立を考えたら最初に読むページ社員って、従業員のことじゃないんですか?
知らないと危ない、一般社団法人の「社員」の話

「社員」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?

多くの方は、「会社で働いている人=従業員」を思い浮かべた方思います。
でも、一般社団法人でいう「社員」はまったくの別モノです。

この勘違いから、設立後にトラブルに発展するケースも少なくありません。
今回はそんな「社員」について、ちょっと踏み込んでお話ししてみます。

一般社団法人の「社員」とは?
キーワードは「社員総会の議決権」

一般社団法人における「社員」は、法人の最高意思決定機関である社員総会の議決権を持つ人のこと。
言い換えると、「この法人の方向性を決める立場にある人」です。

雇用契約を結んで働いている「従業員」とは、立場も役割もまったく異なります。
「名前だけ社員にしておこう」と軽く考えてしまうと、思わぬリスクを抱えることになります。

大袈裟な話ではなく、誰かその法人の社員になるのかということは、一般社団法人にとって最重要の決めごとといっても過言ではありません。

社員は何人必要?
ゼロになると「復活できない解散」になることも

設立時には最低2名の社員が必要です。
設立後に1人になることは認められていますが、社員が0名になると一般社団法人は自動的に解散となります
しかもこの場合、後から「やっぱり継続します」はできません。

つまり、社員の数は「多すぎても危険・ゼロでも危険」な、絶妙なバランスが求められる存在なんです。

社員を増やしすぎると、こんな落とし穴が…

社員が増えると、社員総会での議決権を持つ人も増えます。
つまり、法人の意思決定に関わる人が増える=コントロールが難しくなるということ。

実際、信頼関係の薄い人を社員に入れてしまい、
・発起人である自分が役員から外されてしまった
・全く別の目的で法人が動き出した
なんていう“乗っ取り”のようなケースもゼロではありません。

また、社員になりますという人全員に社員として加入してもらったところ、数年後には参加意欲のない社員が多数になってしまい、社員総会が開けない(定足数不足で議決できない)という状態に陥ることも。
連絡の取れない社員をやめさせるのも簡単ではないので、「形だけ社員」の扱いは、慎重にしないと逆効果になりかねません。

会費を集めて活動したい。でも議決権は渡したくない
そんなときは「会員制度」の導入を

よくあるご相談が、「会費を集めたいけど、意思決定は少人数で行いたい」というケースです。というのも、一般社団法人の運営資金は社員からの借入金や寄付で賄っているケースが少なくないため、社員を増やして会費を多く取りたいけど社員が増えて議決権が散らばるのは困る…という矛盾が生じます。

この場合は、社員とは別に「会員制度」を定めることで解決できます。

  • 会員:年会費を払って、イベントに参加したり、サービスを利用する。議決権はなし。
  • 社員:法人の運営方針を決める中核メンバー。議決権あり。

このように「お金を払って応援してくれる人」と「法人の重要な決定権を持つ人」をきちんと分けることで、バランスの良い運営が実現できます。
また、会員に種別(正会員・賛助会員など)を設けて、ある種別の会員のみ(たとえば正会員のみ)を社員とするように定めることも可能です。

定款の設計で、未来のトラブルを防ぐ

社員資格の得喪、会員制度、乗っ取りリスクへの対策…。
これらはすべて「定款」で決めておくことができます。

最初にしっかり設計しておけば、後からのトラブルはグッと減ります。
逆に、なんとなく設立してしまうと、後からの修正が事実上不可能になってしまうことも

社員設計や会員制度でお悩みの方へ

「誰を社員にすべきか悩んでいる」
「会費で運営したいけど、意思決定は手堅くしたい」
そんなときは、定款の設計がカギになります。

司法書士森成事務所では、一般社団法人の設立や定款設計を専門的にサポートしています。
会費制度の導入や、将来的なトラブル対策も含めてご相談いただけます。

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